役場の人事にお困りではないですか?
町民が困る
町民の方々から、次のようなお困りごとをたびたび聞いています。
- ある事業を一緒に進めてきた職員が突然移動になり、物事が進まなくなってしまった、やりにくくなった。
- ある事務をお願いしていた職員が移動になり、引き継ぎがちゃんとされておらず、一から説明しなければなかった。
- せっかくいい事業がスタートしそうだったのに、職員の移動で中途半端な結果になってしまった、または無くなってしまった、などなど
役場職員は2〜4年ほどで移動するので、このようなことがたびたび起こります。
職員が困る
逆に職員からも、町民と同じ悩みをあちこちから聞きます。
- やりがいを持って進めていた事業をできなくなってしまった
- 一緒に事業をやっていた町民を裏切っているような気になる
- 適材適所の人事が行われているとは思えない
- 自分の人生を生きることができていない
誰も得していない役場の移動の仕組み。
自治労からは、自殺や精神疾患や体調不良と絡めて「自治体職員の専門職化とそれを可能にする人事異動を行うべき」という主張の論文が出されています。(*自治労:公務員や公共民間労働者の組織)
なぜこんなことになっているのでしょう。解決することはできないのでしょうか。
短期の人事異動は合理的なのか?
短期移動のメリットとされるのは、
- 職員が町全体の幅広い知識をもち、経験をつけられる
- 癒着や不正の防止
- 職員の能力による偏り防止、など
短期移動のデメリットは、
- 町民対応の継続性が途切れる
- 業務効率の低下(特に移動直後)
- 職員の負担増
- 専門性の蓄積ができない、など
どちらも理解できますね。
しかし、メリットに関しては、考え方次第のところもありそうですし、他の手段で代替できると思います。
一方、デメリットに関しては、移動を見直すことでしか解決できないものもあります。
人事の根拠が誰もわからない問題
また、私が大きな問題だと考えるのは、
人事の根拠や決定のプロセスが不明なこと。
そして最も重要なのは、
職員の意思やキャリア設計や人生が蔑ろにされていること。
そして、調べた限り、職員の短期的な移動に法的な根拠はありません。つまり根拠がないにも関わらず、これまでそうしてきたから、みんなやってるから的なことのようです。
この問題は、誰もが問題があると感じていながらも、手がつけられていない問題です。どう考えても大変なので、積極的にやりたがる人もいないでしょう。しかし、問題の先送りとそのツケは、すべて次世代にのしかかってきます。
そして、人事異動は自治体の運用方針に任されているので変更可能なのです。
例えば、職員が自分でキャリアを選べる人事
短期移動問題を解決しようとしている自治体はすでにあります。
例えば、
2024年、仙台市は「人事異動サイクルの長期化」や「専門性の向上を重視した人事異動サイクルの実施」に乗り出しています。
神奈川県は、職員が自ら進むべき職務分野を選択しキャリア開発できる「キャリア選択型人事制度」や、プロジェクトに取り組む人を公募する「庁内公募」などに取り組んでいます。
海外に目を向けてみますと、
オーストラリア政府は、「過度な人事異動や、的を絞らない人事異動は悪影響を及ぼす」とし、人事異動自体を戦略的な人材育成ツールとして活用することを目指しています。
その他、人事異動方針の明文化や、透明性の確保などに取り組んでいる国は多数あります。
木曽町役場の人事異動の最適解
では、木曽町役場の人事異動はどうすれば良くなるのでしょう。
一つには、人事異動方針を明確化し、人事の合理性を検証できるようにすること。例えば、人事の根拠を、組織再編/人員最適化/育成/本人希望などにカテゴリーにしておけば、その人事が合理的か否かが検証できます。
もう一つは、役場職員の意思や能力やキャリアの希望を反映することができる人事の仕組みを作ること。もし実現できれば、よりプロフェッショナルな行政組織にできる可能性があります。
木曽町に適合した木曽町をより良くする人事の仕組みが必ずあるはずです。
いずれ、木曽町は職員の短期移動が困難になります。
木曽町は、2050年には人口5000人台になることが予想されています。
自治体は規模が小さくなるほど職員数が減少し、結果として人事移動が困難になるからです。
変化を余儀なくされるのであれば、今から2050年時点での人事の最適解を目指し、取り組みを始め、トライ&エラーをし、次世代により良い木曽町を残していくべきなのではないでしょうか。
目黒峰人
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理想の木曽プロジェクトは、人・社会・未来の三つの軸で木曽町をもっと良くしていく取り組みです。

《参照》
適正事務の確保に向けた本庁と区役所の事務のありよう等における課題への対応方針. 仙台市. https://www.city.sendai.jp/compliance/shise/shokuin/compliance/documents/taiouhoushin.pdf?utm_source=chatgpt.com.
第3期 組織・人事改革戦略. 神奈川県. https://www.pref.kanagawa.jp/documents/11297/3soshikijinji.pdf.
自治体職員のキャリア形成と専門性. 石井淳平. 第33回愛知自治研集会. https://www.jichiro.gr.jp/jichiken_kako/report/rep_aichi33/01/0115_ron/index.htm.
The APS Mobility Framework. APSC. https://www.apsc.gov.au/initiatives-and-programs/aps-mobility-framework?utm_source=chatgpt.com.